この作品はとにかく作品のゴール(目標)がどんどんスライドしていく。
読者が「ファイアードラゴンからファリンを助けたら終わり」と思ってたら、そのファリンはシスルに支配されてしまう。
ではシスルを倒せばいいのかと思えば、そもそもシスルは別の人達が倒してしまう。
次はマルシルへ・・・そして・・・・という感じでスルスルと目指しているものは姿を変えて逃げていってしまう。
本作品におけるダンジョンがその姿を変えていくように。
普通の作品はそういうことはやらない。1つのゴールを目指して走り切るのですら難しいのに、
1つゴールがずれるだけでその変化に対応するためにどんどん話が複雑になってしまうからだ。
だが、本作品はそういう変化がもたらす混乱さえもネタにして織り込んでしまう。
これが可能なのは、最初から物語の全体の設計がしっかり作られているからでもあり
ライオスたちの目指すゴールがすこしずつズレていっても変わらないものが設定されているからだ。
「食べること」を通じて「生きようとすること」の肯定を描くということはブレない。
だからこそ、複雑な話なのに、ブレないテーマを道しるべになんとか物語についていくことができる。
すごい作品だよねこれ。
私は、みんなは最初からずっと絶賛してたのに8巻を読むまではそこまで凄さがよく分からなかった。
9巻で作品の設定のすごさに驚き、10巻でようやく作品そのものがすごいって思うようになった。
ここから先はもう最後まで読みたいという気持ちが凄く強くある。
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