ものすごく名作と言われているので読んだが、さすがに今読むには古すぎた。
でも、当時読んだ人間がめちゃくちゃおもしろというのもよくわかる。
別に今読んでも、期待しすぎなければ十分面白すぎる作品だ。
残酷で狂気に満ちた世界を描いたディストピア漫画。
間違った指導者を選び人間らしい生き方を忘れ、時代や権力者に疑問を持たず家畜のように生きる大人たちとそれによって容赦なく犠牲にされる子供達が嫌というほど鮮明な描写で描かれている。日常的に起こる女性への激しい性的暴行と虫けらなように命を扱われる男性の兵士達が読んでいてこんな時代に生まれなくてよかったという安堵と、選択を間違え続けることでこんな時代がいずれ来てしまうかもしれないという恐怖を駆り立てる。
そして一握りの権力者は自分の利益しか考えず他人に戦争を任せ国を食い物にする老害達。そんな中で狂四郎とユリカの純愛は切なくて綺麗で作中1番の癒しの部分でした。
2人とも唯一自分の幸せを他人に委ねずに生きていて、それでもお互いが自分自身のことを穢れているいるから幸せになる資格はないと苦悩するシーンは涙なしでは読めません。
人におすすめしにくいですが、多くの人に読んでほしい漫画だと思います。
そういう話なのかもしれないけれど私はそれよりもラストの巻で作者が書いているコメントが重要だと思う。
いわばと語っているが、本当に作者は「サイバーパンク・ロミオとジュリエット」をやろうとしてたのだと思う。
長編だしストーリーは二転三転するが、
スーパーコンピューターの「飛鳥」が示す二人の出会える確率が徐々に変化していくのが本当によく出来ているなと思った。
一巻の時点では出会える確率が0だったが、途中で 23 → ・・・・ とあがったりさがったりする
「ロミオとジュリエットのハードルを上げるためにNTRやディストピア要素をこれでもかと詰め込み、それに負けないよう主人公やヒロインもパワーアップさせる」
という発想は他にも応用が効くと思う。
しかし、前半の「大臣」や「八木」はともかくとして本作品の後半の政権トップたちの権力争いのおぞましさはすごいな。
本作品は、主人公が問題を解決する必要がなく、障壁は高いほうがいいから、解決不能なモンスターをこれでもかと投入してきている。
主人公たちも全然キレイな人間ではないのが良い
狂死郎は「生きるため」の必要最低限の戦いなどいってられないので、しょっちゅう殺人狂モードになって人を殺しまくるし、シノも生き延びるために徹底的に汚される。
もう単なるNTRととかそういうレベルじゃない。本当にとっかえひっかえいろんな男から犯されまくってるうちにだんだんおかしくなっていくシノは恐ろしい。
そうやって狂った世界の中で、主人公たちも例外なく汚れていく。
しかし、狂死郎がシノを思う気持ちだけは最初から最後までずっと純粋なまま残り続ける。
最終的にはシノも人を殺すが、むしろこれによって二人の壁もなくなり、真のパートナーとなったところで話が終わるのはマジですごい。
どう頑張ってもキレイに消化し切ることは出来ず、胸の中に残り続けるであろうという意味では名作かも知れない。
白鳥くんが最後までちゃんと生き残ってたのを見れて良かった・・・