後は奏章Ⅳだけ。
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彷徨海(ほうこうかい)
時計塔やアトラス院と並ぶ「魔術協会」の三部門の一つですが、その実態は**「現代魔術を完全に否定する、生きた化石たちの集まり」**であり、他の二つとは構造が根本的に異なります。
シオンが身を寄せていた「バルトアンデルス(北海を彷徨う移動石柩)」の内部構造やメンバーについて解説します。
1. 彷徨海の組織構造
彷徨海には、時計塔のような「階級制度」や「複雑な派閥」は存在しません。非常にシンプルかつ閉鎖的な構造をしています。
五つの扉
彷徨海の中心部は**「五つの扉」**と呼ばれるセクションに分かれており、それぞれにリーダー(扉の主)が存在します。
構造: 「維持」「再生」「発展」「保存」「隷属」の5部門。
関係: 各扉は独立しており、横の繋がりはほとんどありません。共通しているのは「西暦以降の魔術には価値がない」という過激な思想だけです。
総帥(リーダー)
ファブロ・ロワン: 彷徨海の代表。しかし、彼がメンバーを指揮しているわけではなく、あくまで「窓口」や「管理人」に近い立ち位置です。
シオンが交渉した相手も彼ですが、彼は「場所を貸すだけ」という極めてドライな態度を貫きました。
2. メンバーの人数
結論から言うと「驚くほど少ない」です。
定員: 正式な魔術師は**「数人から十数人程度」**と言われています。
理由: 彷徨海は新しい弟子を取らず、神代(西暦以前)から生き続けている魔術師たちがそのまま居座っているだけだからです。
シオンへの言葉: 前述のスクリーンショットに登場した5人は、まさにその「数少ない現役メンバー(扉の主)」たちです。
彼ら全員がシオンに言葉をかけたということは、彷徨海の全勢力がシオンに注目していたと同義です。
3. 彷徨海メンバーの特徴(なぜ分かりにくいのか)
彼らが「さっぱりわからない」と感じるのは、彼らが**「人間を辞めている」**からです。
神代至上主義 彼らにとって「現代」は無価値。数千年前の魔術理論をそのまま使い続けています。
肉体の超越 メンバーの多くは、数千年も生き続けている吸血種や、概念に近い存在に変質しています。
無関心 人類が滅びようが、地球が白紙化しようが「自分たちの研究に関係なければどうでもいい」というスタンスです。
4. シオンとの特殊な関係
シオン(アトラス院)と彷徨海は、本来なら**「水と油」**です。
アトラス院: 未来の滅びを計算し、それを防ごうとする。
彷徨海: 過去(神代)のみを尊び、未来には興味がない。
それにも関わらず、シオンがここに拠点を置けたのは、彼女が**「彷徨海の連中すら無視できないほどの天才的な計算能力」**を持っており、ファブロ・ロワンと(おそらく命がけの)交渉を成立させたからです。
補足: 彷徨海の魔術師たちは、普段は自分の扉に引きこもって一切出てきません。ツングースカのラストで彼らがシオンに声をかけたのは、**「あのアトラス院の小娘、本当にやり遂げやがった」**という、彼らなりの最大級の「野次馬根性」と「評価」の表れだったと言えます。
ファブロ・ロワンについて
ファブロ・ロワンの正体は、古くからのTYPE-MOONファンにとっては**「まさかここでその名前が出るとは!」**と驚愕するような、非常に重要なキャラクターです。
結論から言うと、彼の正体は別作品『月姫』に登場する強敵、**「ネロ・カオス」**その人(のFate世界線での姿)です。
その背景と設定を詳しく解説します。
1. 彼のもう一つの名:ネロ・カオス
『月姫』という作品において、彼は「死徒二十七祖」の第十位に数えられる吸血種ネロ・カオスとして登場します。
本名: ファブロ・ロワン
二つ名: 混沌(カオス)、NRVNQSR(ネルウィンザー)
『月姫』世界では、彼は自分の体内に666体の獣の因子を取り込み、それらを自在に操る「固有結界:獣王の巣」を持つ怪物として描かれました。
2. Fate世界(FGO)におけるファブロ・ロワン
TYPE-MOON作品には「月姫世界」と「Fate世界」の二つの大きな分岐がありますが、FGO(Fate世界)での彼は、**「吸血鬼にならず、魔術師としての極致を追求し続けた姿」**であると考えられます。
彷徨海の代表: FGOでは、移動石柩「バルトアンデルス」の艦長、あるいは彷徨海そのものの代表者として君臨しています。
姿の変質: FGOの劇中では、シオンと対話する際に**「カラスの群れ」**のような姿で描写されていました。これは、彼がもはや単一の人間ではなく、無数の生命や魔術的な群体へと変質していることを示唆しています。
3. なぜシオンを助けたのか?
彷徨海は、前述の通り「現代の出来事には一切関心を持たない」はずの組織です。そんな冷徹な彼がシオンに場所を貸したのは、以下の理由が推測されます。
シオンへの敬意: シオンが計算した「人類滅亡の回避」という目的が、彼の知的好奇心(あるいは彷徨海としてのプライド)をわずかに刺激した。
アトラス院との奇妙な縁: 本来は相容れないアトラス院の次期院長候補が、プライドを捨ててまで彷徨海の門を叩いたという「面白さ」を評価した。
論理的な等価交換: シオンはただ頼み込んだのではなく、彼らをも納得させる「論理的なメリット」を提示したはずです(それが何であったかは、魔術師同士の高度な取引として秘せられています)。
4. 彷徨海の「五つの扉」との関係
ご提示いただいたスクリーンショットに出てきた「エレン」や「ゲノン」たちは、このファブロ・ロワンが束ねる彷徨海の主要メンバー(扉の主)です。
彼らはファブロ・ロワンと同様に、**数千年前から生き続けている「人間ならざる魔術師」**たちです。リーダーであるファブロがシオンの滞在を許可したため、彼らも渋々(あるいは興味津々に)シオンを観測していた、というのがあのツングースカでのシーンの背景にあります。
豆知識: 『月姫』でのネロ・カオスは「フォアブロ・ロワイアン」という綴りで呼ばれることもあります。FGOで「ファブロ・ロワン」として登場したことで、古参ファンは「あのネロ様が今は彷徨海のボスをやっているのか……」と感慨深い気持ちになったのです。
ファブロ・ロワンの師について
1. ファブロ・ロワンが語った「師」の正体
劇中でファブロは、自分の師について以下のような趣旨の発言をしています。
「我が師、大祖(たいそ)が提唱した『汎人類史は漂流物に過ぎない』という言葉……」
ここでいう「師」とは、彷徨海という組織を創設した**「神代の魔術師たち(大祖)」**を指しています。
「大祖(たいそ)」とは?
彷徨海は、西暦以降の「人間の魔術」を認めず、神代(西暦以前)の魔術こそが至高であると考える者たちの集まりです。
創設の経緯: 神代が終わり、魔術が衰退していくことを良しとせず、**「世界そのものを神代のまま切り離して保存しよう」**とした過激な魔術師たちが彷徨海の始まりです。
ファブロとの関係: ファブロ自身も数千年生きていますが、彼はあくまで「その教えを引き継ぎ、移動石柩(バルトアンデルス)を管理している後継者」に過ぎません。彼にとっての師は、数千年以上前に彷徨海の理念を作り上げたオリジナルの魔術師たちということになります。
2. 他作品(月姫)との繋がりにおける「師」
TYPE-MOONの他作品の設定を交えると、もう一つの可能性が浮上します。
『月姫』の世界線において、ファブロ(ネロ・カオス)に「混沌の魔術」を教え、彼を吸血鬼へと導いたのは**ミハイル・ロア・バルダムヨーン(蛇のロア)**という魔術師です。
FGOでの可能性: FGOの世界線でも、ファブロが「混沌」という概念を扱うにあたって、ロア(あるいはそれに類する天才魔術師)から何らかの影響や教えを受けていた可能性は非常に高いです。
彷徨海での立場: ただし、彷徨海という組織全体の文脈で彼が「我が師」と呼ぶ場合は、前述の「神代の創設者(大祖)」を指していると見るのが自然です。
3. 彷徨海の構造:なぜ「管理人」なのか
ファブロが自分を「管理人(コンシェルジュ)」と呼ぶのは、彷徨海が以下のような特殊な構造をしているためです。
本体は「神代」にある: 彷徨海の真の本体は、現代(西暦)には存在せず、神代という「過去」に固定されています。
バルトアンデルスは「出張所」: シオンたちがいた移動石柩バルトアンデルスは、神代から現代へと伸びている「触手」や「潜水艦」のようなものです。
役割: ファブロたちは、その「出張所」を維持し、現代という「彷徨海にとってはどうでもいい時代」をやり過ごすための留守番役に過ぎません。
彼が言及した「師」たちは、今もなお**「神代という過去」の中で、不老不死のまま研究を続けている**とされています。
4. 彷徨海メンバーがシオンに向けた言葉の真意
これらを踏まえると、最初にご質問いただいた「エレン」や「ゲノン」たちの言葉の重みが変わってきます。
彼らもまた、その「偉大なる師(大祖)」の教えを忠実に守り、**「現代の人類なんて放っておけば勝手に滅びるし、救う価値もない」と信じているエリートたちです。 そんな彼らから見て、現代人(カルデア)に肩入れし、必死に未来を繋ごうとするシオンは、「師の教えに背く愚か者」でありながら、同時に「自分たちが捨てた未来という可能性を唯一体現している眩しい存在」**でもあったのでしょう。
だからこそ、最後にあのような「乾杯」や「嘲笑」という、極めて人間臭いリアクションを返したのだと考えられます。
『Fate/Grand Order』の「非霊長生存圏 ツングースカ・サンクチュアリ」において、彷徨海(ほうこうかい)の五つの扉の主たちがシオンに対して放った言葉
彼女という存在が**「彷徨海という異質な組織の中で、いかに孤独で、かつ異端な存在であったか」**を浮き彫りにする非常に印象的なシーンでした。
彷徨海メンバーからシオンへの評価まとめ
彷徨海は「西暦以降の魔術」を否定し、神代の魔術を至上とする閉鎖的な組織です。アトラス院の人間でありながら、現代の「人理」を守るために奔走するシオンに対し、彼らは**「同情」「嘲笑」「敬意」**など、バラバラな反応を示しています。
維持の扉:セレン 乾杯(敬意) シオンの折れない精神、目的遂行への意志の強さを評価しています。魔術師としての在り方に一定の敬意を払っていることが伺えます。
再生の扉:ガヌ 憐れみ(同情) 「不可能なこと(人理修復)」に心血を注ぎ、自らを削るシオンの行動を、悲劇的で報われないものとして哀れんでいます。
発展の扉:エレン 嘲笑(見下し) シオンが失ったもの(アトラス院での地位や平穏など)や、彼女が直面している絶望的な状況を笑いものにしています。最も冷酷な反応です。
保存の扉:ゲノン 共感(理解) 彼女が背負った「使命」そのものには理解を示しています。「何かを守ろうとする」という一点において、保存を司る者として通じるものがあったのかもしれません。
隷属の扉:フシルカ 蔑み(嫌悪) 常に変わらぬ軽蔑。彷徨海の理念から外れ、現代の人間に加担するシオンを「格下の存在」あるいは「裏切り者」のように見なしています。
シオンと彷徨海の関係性の背景
1. 「間借り人」としてのシオン
シオンはもともとアトラス院の次期院長候補でしたが、彷徨海の拠点である「バルトアンデルス」の一部を借りて、ノウム・カルデアの拠点を設営しました。 彷徨海の魔術師たちにとって、シオンは**「勝手に部屋を使わせてやっている、奇妙な隣人」**程度の認識でしたが、ツングースカの土壇場で見せた彼女の演算能力や覚悟は、彼らを無視できないレベルで動揺(あるいは感心)させました。
2. 「孤独な天才」への観測
彼らの言葉が「???」という発信元不明の形で届いたのは、彼らが直接手を貸すことはなく、あくまで**「高みの見物」をしている観測者**であることを示しています。 シオンが一人で過酷な演算(虚数潜航や事象の固定など)を行っている際、脳内に直接響いたこれらの声は、彼女がどれほど異常な環境で、誰の理解も得られぬまま戦っていたかを強調する演出となっていました。
3. シオンの返答
これらのバラバラな評価(嘲笑や憐れみ)を投げかけられた際、シオンはそれらを否定も肯定もせず、ただ自分の成すべきことを淡々とこなしました。このシーンは、シオン・エルトナム・ソカリスというキャラクターの**「人理を守るという決意の固さ」と、「彼女もまた、彷徨海に劣らぬほどの超常的な知性体であること」**を改めてプレイヤーに印象付けました。
彷徨海のメンバーは、基本的には「人類の味方」ではありませんが、あの極限状態のシオンに対してわざわざ言葉をかけた(通信を送った)こと自体、彼らが彼女の存在を無視できないほど高く評価していた証拠とも言えます。