Wさんによるモルフォ講義です。4編のうち3編までは公開します。
基本情報
モルフォ 2011年6月29日上場
公募価格 2,250円 →初値4,840円、2.15倍平成27年4月30日株式3分割実施。
つまり現時点では公募価格からだと13倍、初値からだと6倍になっています。
参考資料 (基本情報と目論見書以外は後述します)
http://kabutan.jp/news/marketnews/?b=n201504140217
目論見書 2011年6月
https://post.tokyoipo.com/ipo/10816/36532011063003.pdf
目論見書の読み方についてはこちらを参考にしてください。
新規公開(IPO)株の目論見書の読み方 「ジグソー(新会社名JIG-SAW)」 - ワールド・エンド・エコノミカが大好き
まだ見ていない方がいるかもしれないので念のため再掲しておきます。
ここからが講義になります。
時間です、でははじめます。
上場直後のモルフォについて (世間の認識)
最初に、モルフォは5年前に上場しました。
その後、4年前に市況かぶ全力2階建にて取り上げられています。
モルフォ : 市況かぶ全力2階建
もう上場ゴールってレベルじゃないモルフォが2011年7月上場から3度目となる業績下方修正を発表 : 市況かぶ全力2階建
上場1年で2回の業績下方修正をした後に従業員3割の希望退職を募集するモルフォの上場ゴールチャート : 市況かぶ全力2階建
4年後の今から思うと、記事の内容から受ける印象が全然別物に見えます。
当時のチャートはこんな感じです
上場から1年後は、上場ゴール銘柄扱いされていました。
当時は東京大学やノキアのベンチャーキャピタルが株主にいました。
そして、上場に関するお金は、目論見書に寄るとこの通りです
新規発行による手取金 474,720,000円
売出金額 205,110,000円
オーバーアロットメント 107,500,000円
吸収金額合計 787,330,000円=7.8億円
マザーズかつ10億円未満なので、爆上げする要素があります。
実際、上場直後に最高株価7960円(分割後2660円)をつけました。 公募価格の3.5倍です。
有価証券報告書の内容 その1 上場時の事業内容の把握
では、2011年6月に作成された目論見書から入ります。
1章. 事業の概況
当社は、画像処理技術を用いて開発した各種ソフトウェアに係るソフトウェア・ライセンス事業を行っております。ソフトウェア・ライセンス事業の売上高は、1ロイヤリティ収入、2サポート収入、3開発収入で構成されております。
上場時は画像処理のソフトウェアのライセンスとサポートが主だったことがわかります。
2章 業績等の推移
順調に利益が増えているのを確認するだけで十分です。
3章 事業の内容
当社は、デジタル画像処理技術の研究を行ってきた東京大学出身の技術者達を中心に、平成16年5月に設立した研究開発先行型ベンチャー企業であります。当社では、携帯電話やデジタルカメラ等の組込み機器をはじめとして、様々なプラットフォームにおいて画像 を認知、処理、そして表現する、これら一連のプロセスを通して、効率的且つ高品質な次世代のデジタル画像処理フレームワークを提供することにより、デファクト・スタンダードとなることを志向してまいります。当社は、画像処理を用いて開発した各種ソフトウェアに係るソフトウェア・ライセンス事業を行っております。
その事業は以下の3つ。
(1)ソフトウェア製品
(2)収益構造
(3)知的財産戦略
(1)ソフトウェア製品について。
デジタル画像に関する高度なアルゴリズムを創出すべく研究開発を行い、最先端の画像 処理技術を駆使した各種ソフトウェアを製品化してまいりました。現在の当社の技術及び製品の優位性は、機 能を全てソフトウェアで実現しているため余計な容積を必要とせず壊れにくく、且つ消費電力が少ないという点であると考えております。
2011年上場の時点で商品化したソフトウェアは全部で17個。内容はカメラのブレ補正が中心。技術的な話が色々書いてありますが、ここは簡単にまとめます。
写真を同時にたくさん撮影し、それを重ねあわせることでブレを自動検出し、手ブレをなくした写真を作ります。
ほとんどの商品はこのためにあります。(1)は以上です。
(2)収益構造について
①ロイヤリティ収入
キャリア及び携帯電話のメーカーにたいして画像処理ソフトのライセンス料金を取ることが主な収入源です。AppleのiPhone以外の携帯電話にほぼ全部搭載されたと思われます。当時はまだガラパゴスケータイも残っていました。そのカメラの手動ブレ補正機能としてモルフォのソフトウェアを組み込んでいたわけです。ガラパゴスケータイとモバイルフォン(Android)ね。
そのライセンス料金が「ロイヤリティ収入」となります。こちらは、携帯電話1台1台ごとにいくら〜と決められて一括で支払われます。
②サポート収入
そして、次のサポート収入というのは携帯電話を作る側に対するサポートの料金です。モルフォのソフトを組み込むのに必要な修正のサポートという意味合いです。
③開発収入。
上場当時は携帯電話限定でした。その後、それで得たノウハウを新たな製品やサービスに活かしています。
(3)知的財産戦略について
新規性のある独自技術の保護及び当社の活動領域の確保のために、独自の技術分野については、他社に先立って特許権の取得、活用・保護をすすめていく方針であります。
これは積極的に特許をとって、ソフトウェアから得られる利益を守るということ。上場時には既に15件の特許を取得済み。特許は全部さっきの画像処理関係のものです。
4章 関係会社の状況
上場時はなし。
5章 就業員の状況
80人いて、平均給与は年745万円。全体的に高給取りです。つまり、高いお金を払って雇っている優秀な人の比率が高いことが見て取れます。これより、画像処理ソフトウェアの開発技術力が高いと予想されます。
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有価証券報告書の内容 その2 今後の事業の方向性およびリスク要因などの理解
1章 【事業の状況】について
(1)事業の状況
2011年当時でスマートフォンによるガラパゴス・ケータイの減少はライセンス料金の減少につながりかねないことが書いてあります。今のスマートフォン用のソフトウェアはまだ作ってなかったっぽいですそして海外では旧式携帯の普及によりライセンス料金が伸びることが書いてあります。
上場時、つまり5年前の時点ではAndroid用の手ブレ対策ソフトを受注して開発することが書いてあります。逆に、ガラパゴス・ケータイの減少によりライセンス料金の減少が課題と認識されています
(2)キャッシュ・フローの状況
特に異常な数字はなし。
T: なるほど。。市場変化早かったですからね
2【生産、受注及び販売の状況】
当社事業はソフトウェア・ライセンス事業という単一セグメントであるため、売上区分別に記載しております。
取引相手に注目。
- シャープ株式会社 24.5%
- 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ 26.7%
- NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 13.1%
上位3社で取引の64.3%を占めています。 後は細かい部分は省略。
T: SH.Nの時代だ
3 【対処すべき課題】(今後の事業方向について)
海外、例えば中国やインドでは大きく伸びるため、そちらに力を入れると。当社では“モバイル端末向け画像 処理技術のデファクト・スタンダードとなる” ことを中期経営目標に掲げており、顧客ニーズに適応した新たな技 術開発及び製品開発に積極的に取り組んでまいります。
1 必要な人材の獲得等について
優秀な人を確保する必要あり。
2 開発・技術サポート体制の確立について
当社は研究開発先行型のベンチャー企業です。中核技術以外の開発サポート等につきましては、外部協力者との連携を促進し、効果的な開発体制の構築に努める方針であります。
3 知的財産権の確保等について
新規性のある独自技術の保護及び当社の活動領域の確保のために、独自の技術分野については、他社に先立って特許権の取得、活用・保護をすすめていく方針であります。当社では、専門的知識(弁理士資格等)を有した社員を知的財産部門に配置し、技術部門との情報共有を密に図る。
4 国内市場への対応について
直近(※2011年当時)ではスマートフォンのシェアが急激に拡大し始めており事業環境に大きな変化が起こりつつあります。技術、性能及び品質において、まず国内で早期に認知され高機能端末へ標準搭載されることが戦略的に重要なテーマとなります。オープンOS化への対応や今後急速に進展すると見込まれるクラウド化を視野に入れたサービス &ソリューション分野や情報家電分野に対しても有効な技術開発を推進し、画像処理分野におけるデファクト・スタンダードを目指します。
5 海外市場への展開について
事業規模を拡大させるためには海外展開が戦略的に重要なテーマとなります。海外拠点の設置や現地要員の確保等、インフラ及び体制の整備に取り組むとともに、並行して海外携帯電話端末機器メーカ等との幅広いネットワークを有したビジネスパートナーとの事業連携を構築することも重要となります。
6 新規事業領域への展開について
当社は、携帯端末機器分野に特化した技術開発及び製品開発を行っております。当社技術の強みは画像処理に関連する幅広い分野に応用可能な点である。当面は中期経営目標の達成に向けて携帯端末機器分野、デジタルカメラ分野、情報家電分野に対して経営資源を集中させます。
7 内部管理体制の強化について
財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用が重要である。
4【事業等のリスク】 (最重要)
(1) 新技術及び新製品の開発に関するリスクについて
新たな付加価値を提供することにより、当社の技術的な信頼性及び認知度を高めながら事業規模の拡大に努めております。将来の成長は、技術的優位性の維持と、市場のニーズに適応した付加価値の高い製品の開発に依存します。
(2) 収益構造について
1 利用許諾契約について
競合製品の台頭や代替技術の出現により、製品又は技術が陳腐化した場合には、収益の低下を招く可能性があります。
2 ロイヤリティ単価の変動について
ロイヤリティ収入の価格設定方法は、当社の対価基準を元に、顧客との間で協議して設定した出荷数見積りと利用期間をもとに設定されます。対価の受け取り方法は、出荷数実績に応じて収受する方式と、契約締結時に最低保証料として一定額を一括収受して以降は出荷実績に応じて収受する方式に大別されます。
(3) 知的財産権について
当社の属するソフトウェア業界では、国内大手電気メーカや欧米IT・ソフトウェア企業等が様々な領域において特許を取得し ており、画像処理の分野においても一部では基本特許が取得されています。また、大手企業の多くは、ブランド戦略として文字やロゴを問わず商標権等を広く押さえております。このような状況の中、当社は既存の技術とは一線を画す新たな技術を創出し、他社に押さえられていない領域において積極的に知的財産権を取得し、活用・保護をすすめていく方針であります。
組込系ソフトウェアは、知的財産権として保護したとしても、パクられるのを防ぐのは困難です。
他社知的財産権を侵害しないための事前の対応を図っております。
(4) 職務発明に対する対価について
役職員の職務上の発明等に関するルールを職務発明等取扱規程において定めております。当社では、これまでに職務発明に対する対価について従業員との間で紛争が生じた実績はありません。
T: あー。そういう時期だ。特許
(5) 品質管理について
当社が製品化するソフトウェアは、プロジェクトごとに製造過程から納品までを管理し、品質の維持向上を図ることを目的とした品質管理規程を制定し、管理・運用しております。PCデモ版等により様々な環境下での動作を検証し、特定の仕様に依存しない移植性の高い ソフトウェアの開発に努めております。もし不具合が発生した場合は財務会計に影響をおよぼすことがあります。
(6) 携帯電話端末業界の動向について
1 国内市場について
携帯 電話端末の出荷台数は大幅に減少しました。
2 海外市場について
欧米諸国ではハイエンド端末が普及しており、中国やインドなどの高い経済成長を維持している新興市場では地方の通信インフラ整備が進んでおります。スマートフォンのシェア拡大もあって需要は拡大しております。今後は米国、欧州、並びに経済成長が著しいアジア諸国への海外進出を予定しております。
海外市場で事業を行う際には、特有のリスクがあります。
・商慣習の違い
・為替レートの急激な変動
・想定外の法的、又は規制面の変化
・社員の採用と雇用維持及びマネジメントの難しさ
(7) 特定人物への依存について
当社の創業者であり、代表取締役社長である平賀督基は、東京大学及び同大学院において画像処理技術を専門に研究を行ってまいりました。何らかの理由で平賀督基が当社事業を継続することが困難となった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
T: むしろ人的リスク言い切るんだ。潔
(8) 特定の販売先への依存度について
先ほど上げた3社への依存率が6割以上あること。
海外の通信事業者との関係強化及び携帯電話端末機器メーカへの拡販を積極的に進めていく方針です。更にその他の分野にも事業領域の拡大を図っていく方針です。
(9) 特定の外部委託先への依存度について
中核技術の開発以外の開発サポート業務や、新規分野への参入時における専門性の高い業務の一部などは、外部委託先との連携を積極的に推進しており、これらの相乗効果により、効果的な開発体制の構築に努めております。
外部委託先は、現状は アイテック阪急阪神株式会社 及び 三菱電機マイコン機器ソフトウェア株式会社 の2社への依存度が高くなっております。(2社への依存度は95.1%)
(10) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
潜在株式数は平成23年5月末現在265,600株(発行済株式総数の23.03%)
(11) 配当政策について
これまで利益配当を実施しておりません。株主に対する利益還元につきましては、経営上の重要な課題として認識しております。当面は、携帯電話端末向け画像処理技術のデファクト・スタンダードとなることを目指して、市場ニーズに適応した新技術や新製品の開発及び研究開発活動、加えて海外展開に向けた先行投資へ効果的に資金を投じ、企業価値の最大化を目指してまいります。
有価証券報告書 その3 研究開発活動の詳細について(技術分かる人とそうでない人の差がつく箇所かな)
6【研究開発活動】
(1) 研究開発活動の方針
中核技術にかかる研究開発は社内リソースで賄う。中核技術に関わらない間接的工程については、信頼のおける外部協力会社を積極的に活用
(2) 研究開発体制
今後は、ハードウェアとの連携を図るべく既存技術を半導体(チップ)へ 組込むために必要な記述言語化(RTL化)に関わる開発体制の強化を図る
(4) 研究開発の成果等
1新たな基盤技術の開発
・画像の認識及び検索に係る技術開発2新たな基盤技術を応用した新製品の基礎研究及び開発
・動作を認識して様々なデバイスを操作する技術開発
・インフラが整備されつつある3D関連の技術開発3既存製品の付加価値を高めるための機能追加
・圧縮画像等を高速に表示する技術開発
・デジタル画像から顔等を検出する技術開発4既存の中核技術及び製品を応用した新たな製品の開発
・基盤技術のハードウェア化に向けた技術開発
・画像の切り替えや加工に係る技術開発
ここは現在への展開を考えるために重要なので全文引用。
つまり、上場当時から多方面への展開を考えていることがわかる。
(R: 3D…まじか モルフォすげー)
(P: 圧縮画像を高速表示...ARVRにピッタリ)
有価証券報告書 その4 財務・設備状況について(こちらは財務畑の人が強いかも?)
7【財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
特筆する点はなし。(うちに知識がないのもあります)
第3【設備の状況】
1【設備投資等の概要】
ほとんどはパソコンとソフトウェアと自社開発ソフトの3つで占められている。3【設備の新設、除却等の計画】
人員増加に伴うオフィスの拡充や
各種開発に使用する器具及びソフトウェア
更には自社開発のソフトウェアが主
このあたりの額が大きい場合は要注意ですね。
上場の企業の場合はそれほどないと思いますが
大きな「ソフトウェア資産」償却や「のれん」償却がある場合は注意したいです。
有価証券報告書 その5 大株主の状況やストックオプションの条件等について
第4【提出会社の状況】
こちらは株式の状況の話。
リスクの方に、発行済株式の23%に相当するストック・オプションの存在が書いてある。
第3【株主の状況】
こちらに当時の株主構成があります。当時のVCは現在、もうほぼ抜けていません。
ドコモとNTTカシオが大株主にいます。あと野村證券も。後は個人ばかりですね。
他にはNTTファイナンスとパナソニック、株式会社メガチップスだけです。
以上です。
以後の部分は公認会計士が読まないとわからない内容ばかりです。普通の方がいくら頑張って読んでも、意味を読み取れない部分なので飛ばします。
念のため「増資」で検索した結果、最初の公募増資以外はないことがわかりました。よって、上場時以外は増資を考えていないことがわかります。つまり、上場時に新たに株式を増資という形で発行して、既存株主がついでに売出しました。
目論見書チェックは以上で終わりです。
続いて各種レポートのチェック