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DQユアストーリーの監督に「悪意」を見出すべきかどうか問題

私があなたを愛した、たくさんの証拠が見つかった。
あなたが私を愛した、たくさんの証拠が見つかった。
あなたが浮気をしていない証拠だけ、見つけられない・・・(うみねこのなく頃にEp5)


jp.ign.com
読んだ。私はこの映画見に行かないつもりなので作品についての良し悪しは言う資格がない。どちらかというと作品についての反応がおもしろいなと思ったのでその話だけする。

・「望まぬ相手からの愛ほど気持ち悪いものはない」ってこういうことか……。ステキCGで釣っておいて押し付けがましい愛を叫ぶとかDV男と一緒やん……。

・1時間46分でドラクエ5の全ては語れないし、勇者ヨシヒコと同じ現実落ちだって構わない。ワクワクしながらプレイした思い出を蘇らせて貰ってありがとうございます。

・「ゲームと現実の境目がつかなくなる物語」っつうと「ノーライフキング」があるんだよな。あれも映画は微妙だったし作り手にはゲームを下に見る風潮があった気がする25年前

・物語をある程度進めた後、メタ構造で全部ひっくり返すプロットが流行ってるのは確か。のび太の宝島トイストーリー4とか。私は大嫌いだけど。

・moonが20年前に通った道

MOON

MOON

まぁいろいろあります。

この山崎さんの言及のされ方がおもしろい。

①ラストを中心に強い悪意を見出して批判する
②そもそもラスト以外も面白くなかったのでただの無能とみなす
③それなりに面白かったから賛の評価をする

という感じでキレイに分かれています。

これを見て思い出したのがこの前の松本人志の映画評。

note.mu

どうもこれを見ると、松本人志についても「悪意の人間とみるか無能とみるか、いやいや彼は天才だと肯定するかの三択に分かれている」みたいです。

どうもこの共通点がおもしろい。

松本人志の映画に関する3作品目までの評価はこんな感じだ。DQユアストーリーの監督に悪意を見出している人の記事を読む限りはおそらく山崎さんにあてはめてもそれなりに成り立つ話に見える。

全体として、低予算の着ぐるみコントでやるべき内容を、高額な資本やCGを使いまくってやってみた、という感じがする。

僕の考えでは、○○に「悪意」はある。そう感じる。だがそれは、政治的なものとしての悪意とは微妙に異なる。○○的な悪意とは、善悪や真偽などの区別自体を無意味化していく悪意であり、この世には様々な価値観を持つ人間たちが多事総論によって新しい価値をたえまなく生み出していく、というアレント的な「政治=公共性」の意味を根こそぎに嘲弄し、虚無のアビスへと引きずり込んでいくような「悪意」としての「笑い」である

重要なのは、○○映画には必ず、こうした特異点があり、「映画=シネマ」としての体裁をみすぼらしさというエレメントに引きずり落としてしまうことだ。今まで辛抱強く観てきたものが、もはやシネマでもなく、テレビ的なお笑いでもなく、何か徹底的に「みすぼらしいもの」(うんこちゃん)に変わり果ててしまうのだ。そしてそれは〇○自身の歪んだ自意識とも絡みあっている。

俺はこんなにお前らにいじめられているんだよ! みすぼらしいん存在なんだよ! という痛みのようなものに。むしろ、すべてをみすぼらしい何かに変質させていくこの特異点を描くために、悪魔的な嘲弄と寒々しい虚無の笑いを描くために、○○は映画を作ってきたのではないか、とすら思われてくる

全てを台無しにする悪意によって、映画自体を文化でも芸術でも美でもなく、無意味ですらなく、どうにもならないみすぼらしさというエレメントへと引きずり落とすこと。しかしそのみすぼらしさが作中ではあざといまでの被害者意識となり、被害者意識が周りに対するむき出しの悪意となって、やがて松本映画は「圧倒的にくだらないもの」を「これがわからない奴はバカであり、うんこちゃんである」ということにしてしまう

○○的な特異点――この世界そのものを、意味でも無意味でもなく、ありのままの空疎なみすぼらしさに引きずり込んでしまうような特異点。それが〇○的な映画のクリティカルポイントである。それは生態系的循環の中で豊饒さをもたらす「うんこ」ですらなく、「うんこちゃん」である。

この空疎さと尊大さの捩れた一致は、いかにも○○という人間らしい。そうした○○を褒めそやすことを仮に「○○教」と呼ぶとしても、じつはそれは、この世の誰ひとり信者になることのできない宗教であり、○○以外のありとあらゆる人間を等しく「うんこちゃん」のくだらなさに引きずり落としていく、そうした異様な宗教性なのだ


ここまでだったらまぁそういうこともあるかなという程度なんだけど。
4作目で松本人志が今回のDQユアストーリーと同じことをやっているのがおもしろい。

物語が四〇分ほど進んだ段階で、ここまで観て来た映像はじつは、一〇〇歳を過ぎた老映画監督が作っている映画であり、関係者たちはその余りのつまらなさに呆然とし、声も出ないでいる、というメタフィクショナルな構造が判明する(松本映画に対する世の中の批判や失笑や罵倒を、映画内で先取りするかのように)。実際にその後の物語は次第に破綻し、どんどんと酷くなり、意味不明の、ノンセンスな、いかにも松本らしい「ぜんぶ台無し」の展開へと突き進んでいく。


さらに面白いなと思ったのがこの部分。

①○○は映画における賭け金の吊り上げ方が、非人間的なまでに尋常ではないところがある。

②しかし、肝腎の『R100』の映画としての出来はどうだろう。内容の痛々しい空虚や寒さに対する、「あらかじめの言い訳」以上の何かが、そこにあっただろうか。

映画の実物を見ないで情報を見る限りだと、これは悪意を見出すべき案件じゃなく純粋に不幸な失敗だったと思う

メタフィクショナルな作品を作る人は、何かしらそれによって表現したいことはあるのだと私は思う。メタフィクショナルな展開それ自体を手段ではなく目的としているようなクソが人気作家や監督になれるとはあまり思えない。

なので、見てないからわからんけど「何か」はやろうとしたのだと思う。

ただ、とにかく監督と作品の相性が悪すぎた。結果として出来が悪く、独善的で、ひたすらにつまらないものになった。これによって「何もかもが台無しのうんこちゃんになった」。

ただそれだけなんじゃないかなぁと思う。


もう少し具体的に言うと、個人的には、子供のころにDQやってた人にノスタルジー感じさせたり、その過去を肯定させるということが目的だったのであれば、こんなメタフィクションじゃなくて、ニュー・シネマ・パラディーソみたいな作りにしてほしかったなと。

www.nicovideo.jp
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繰り返しになるけど、映画見てません。見てないので妥当性はまったく検証できませんが、たぶんやりたいテーマに対する料理の仕方の選択が根本的におかしかったんだと思う。
堀井さんたち原作サイドの要求が強くて大部分は原作の描写を多めにせざるを得ず結果としてキメラみたいな作品ができちゃったみたいな経緯もあるかもしれないし、山崎さんだけにすべて押し付けるのもどうなのだろうって思う。



その作品に思い入れのあるファンにとっては批判や否定されるより「台無しにされる」ほうが罪が重い →悪意を見出すしかない

でも、ファンにとってこの「ただ台無しにされること」というのは、否定的な作品をつくられるよりよほど厳しいものがあるのだと思う。

なんか怒りの記事を書いてる人は同時に憔悴しており、できれば見たことを忘れたいと口をそろえて言っている。怒ってる人たちは「もはや怒るくらいしかできることがない」のだと思う。なので「せめて怒りをぶつける対象であってほしい」→「あの作品は悪意で作ったものだ。間違いない」という風になっていくのかもしれない。


この光景、けものフレンズ2の時にも見た。私は、けもフレ2に関してはとにかく何もかも足りなかっただけだと思うけどな……。(もちろん愛も足りないけど)


今回はどうなんだろうね。


とはいえ、いつもは冷静なcdbさんやfujiponさんですら「これは監督の悪意に違いない」と言ってるので、自分も実際に見たら監督の悪意を信じるしかないのかもしれないけど。


fujipon.hatenadiary.com
www.cinema2d.net



と思ったらcdbさんは一晩経ってちょっと論調が変わってますね。

www.cinema2d.net

監督はドラクエファンをエンパワメントしたつもりかもしれないけど、最終的に「VRへの自閉」を肯定しているように読めてしまうわけ。でもそれは全然ドラクエファンにとって嬉しいものではなく、むしろ堀井雄二という不世出の天才が書いた『ドラゴンクエスト』という物語、それは書かれた媒体が違うだけで『ハリーポッター』のような児童文学にもひけを取らない8ビット文学の思想と真っ向から対立している。

監督は「大好きな仮想現実を肯定されてファンは喜ぶだろう」と思ったのかもしれないけど「外側だけ美しい、魂のないビアンカたちと永遠にVR空間で暮らす」というのは男の子のプレイヤーから見ても「ビアンカやフローラの魂を愛した、魂で選んだ」という選択の否定だし、女の子のプレイヤーから見れば「結局魂があるのは男の子の主人公だけで、ビアンカもフローラも魂さえ許されない人形だった、こんなの囚われのお姫様よりもひどいじゃないか」という究極のディストピアに見える

「子供向けのコンテンツをそのままやってもつまんないから何かひねろうかな~」と思ってやったらとんでもない負の化学反応が起きてしまったということなんだと思う。


さて。こんな無意味な文章書く暇があるならさっさと見に行ってこいって言われるかもしれませんが。


嫌です。絶対見ません。かえしておうちにかえして(シャミ子かわいい)

まちカドまぞく (1) (まんがタイムKRコミックス)

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ささくれだった心をいやすにはこの作品見るといいよ。

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