マイナス金利について全然わかってなかったのでちょっとずつ整理していきます。
勉強したてで書いてるので間違いなどあればご指摘ください。
「マイナス金利ってなんぞ?」という話と
「今マイナス金利がどういう影響をもたらしているのか」
について考えたいと思います。
こんなこと考えるより投資で勝つ方が大事なのですが、やっぱり投資のこと考えるとこういう金融の話って絶対興味出てきますよね。
日本がかかえる三つのマイナス金利
そもそも金利にはたくさんの種類があります。
当然、マイナス金利についても3つあります。(もしかしたらほかにもあるかも)
その時々でどれが話題になってるのか確認する必要があります。
①ドル・円の調達プレミアムの差によって生じている逆ザヤ状態のこと。
これは量的緩和によって円がジャブジャブにあふれているせいで円が余っているから。
それに対してドル需要は強く、ドルが不足しているためドル調達コストは高い。
海外でビジネスをしている日本企業は、現地での取引にドルがどうしても必要だから
円を安く提供しドルを高値で譲ってもらわざるを得ない。(ベーシス・スワップ契約)
ゆえに、ドルを持っている海外勢は
一定期間ドルを提供し円を預かるだけで儲かる逆ザヤ状態になっている。
これによって、日本の為替市場は海外勢にとってのATM状態になっている。
また、この取引の結果海外勢は使い道のない円を一時的に持つことになるため、
これで日本国債を買って日銀に買い取らせている。これによって②のマイナス金利が発生する。
②日本の短期・中期の国債利回りがマイナスになっていること。
本来国債は金利(インカムゲイン)目当てで買われる。
マイナス金利であるにも関わらず国債を買うのは売却益(キャピタルゲイン)のみ。
つまり実質的に日本の国債はすでに「資産」ではなく「コモディティ」となっており安定資産とは程遠い。
量的緩和政策によって①で円を一時的に調達している海外投資家と日本の生保が買い、
さらにそれを日銀が引き受けることでなんとか債券市場が維持されている。
当然ながらマイナス金利状態なので長期保有はできない。
金利発生タイミングで保有していたら損をするから。
そういう商品であるにもかかわらず日銀のせいで債券市場がゆがみ価格が吊り上げられてしまっている。
そのため、いつVaRショック
(2003年6月に、明確なきっかけがなく突然金利が上昇=一斉に国債が売られ暴落した事件)
が起きてもおかしくない。
日本国債は日銀の影響で実質的な価値と価格が大幅に乖離しており
ある意味株より非常にリスクの高い状態となっている。
GPIFのリスクについて考えるなら、株よりもこちらの方が危ないと私は思う。
①と②は裏表の関係である。詳しくは下にまとめた通り。
マイナス金利 - Togetterまとめ
どちらもやめるにもやめられない状態である。
日銀が買い入れを減らしたり海外勢がいきなりリスクオフで利確を始めるといつでも暴落するリスクがある。
そのうえで、日銀はすでに買いすぎでパンパンだしこれ以上の余力はないとされる。
③1月29日に日銀政策決定会合で話題になった、日銀内の政策金利残高に対する負の金利措置のこと
これ自体についてはいろんなところで解説があるので読んでもらうとして。
マイナス金利になるとどうなる!? | Money Motto!(マネーモット)
これの本質的な意味は「邦銀に対する日銀の裏切り」=「日銀と邦銀等との間の蜜月の関係の終わり」である。
そもそも量的緩和とは何かがわかってないとマイナス金利の意味が分かりにくいが、量的緩和は直接日銀が金を刷って市場にばらまくのではなく、あくまで日銀が金融機関等から国債を買い取って銀行のお金をフリーハンドにするというものである。「国債買ってるから融資に回せません」「国債持ってれば低いとはいえ金利もらえるのでこれで満足です」という状態をなしにする。
銀行側からすれば、国債なくなって現金になるとその分金利がもらえなくなるわけだから代わりにどこかに出資しなければいけないよね、という話になるはずだった。とはいえ、銀行だって小泉内閣程度でやったプチ量的緩和ならともかく、投資PFの大部分を占める国債を日銀にもっていかれたら困る。だからいくら命令とはいえなんのご褒美もなしでは日銀に国債を売らないよ、と言って渋ったので日銀は「国債を売ってくれた分については金利を付けるよ」と約束して国債を買い付けてたわけ。
(そのために日銀は強烈なレバレッジをかけて国債を買っているし、銀行に利息も払っている。その原資の担保となっているのはもちろん国民の家計資産である。言うまでもないけど、量的緩和のお金がどっかから湧いてきてるとは思ってないよね?)
にも拘わらず、その金利をなしにしたりマイナスにするというのは明らかな裏切りなわけですよ。
これによって、追加緩和の拡大は非常に困難になった。なぜなら銀行からすれば「そもそも長期国債を売ったら、その分の利息をよそで稼がなきゃいけない。そんなに投資先がない」上に「しぶしぶ国債を日銀に売ったら、その代金についてマイナス金利をかけられる」では踏んだり蹴ったりだからだ。 もはや日銀が追加緩和をしますといっても以前よりずっと渋るだろう。
だから、7月末の日銀政策決定会合では、量的緩和の枠を拡大することはできず、代わりにETFの購入額を増やす(直接市場の株を買う)という形で株価維持を行うことしかできなくなっている。
その他の金利もあるようだけどよくわからない。実は金利といってもいっぱいあるのよね……
①その国の中央銀行が銀行に貸し出す際の金利「政策金利」が超低金利状態になっている
・これはさすがにマイナスではありません。ですがこれが低いと銀行が企業に貸し出す金利も低いので、ゾンビ企業がなかなか消えない状態になってしまいます。そして、急に金融引き締めなどが行われると一気に「不良債権」化するようなリスクが増えていくことになります。
②銀行間のオーバーナイト金利
すみませんよくわかりません。
③各種ローン金利
住宅ローン、学資ローン、自動車ローンなど。
いやゆる個人のクレジット消費ですね。
リーマンショック前夜のアメリカでは、家計資産を越えるほどのローン残高がありました。
今も、サブプライムや自動車ローンを筆頭にクレジットの額は膨らんでいます。
現時点ではこれらの金利が低くなっているからいいけれど、これが上がったら焦げ付きますよね。
というか、実際に若干焦げ付きが観測され始めています。
リスクが大きいのがわかってるのになんでマイナス金利(あるいは超低金利)を維持してるの? =やめたら債券市場暴落・円高・株安の地獄になるから、怖くてもやめられないチキンレースになっている
特に日本の場合「国債金利」だけは絶対に上げることができません。
ただでさえプライマリーバランスが大幅マイナスの状態でこれを上げた瞬間、国の借金の増加が止められず、日本という国への信用が維持できません。
上で書いた事情で、国債自体がすでにマイナス金利状態になっているので国債は資産としてはみなされません。なので、日本は借金額が国民の家計資産(現金枠)を超えた瞬間からいつでも急にデフォルトするリスクが生じます。
国債金利の上昇だけは何が何でも食い止めなければならない。国債金利の上昇は「インフレ=物価上昇」の範囲内でのみ許容できる。だからこそ日銀は執拗にインフレを目指しているし、その一方で国債はマイナス金利になるまで低金利に誘導している。「金融抑圧」というらしいです。
アベノミクスはよくブレーキを踏みながら(経済活性化の側面ではマイナスの政策)、アクセルをかけている(ストック価値だけを増大させている)と揶揄されます。しかし実際問題として「GDPが上昇しない限り」、両方をいっぺんにやらざるを得ない状況なのです。別にこれはアベノミクスが特別無能というわけではない。
などなどといったいろんな前提を踏まえつつ「マイナス金利」の悪影響を考えてみたいと思います。