「いじめ」でよくある場面。正義感の強いコミュ達の転校生がやってくる。すると、クラスでいじめが横行しているのを見て、持ち前の正義感を発揮し、いじめっこを撃退する。で、そのまま去ろうとした時に、いじめられっ子から呼び止められ、こう声をかける。「なんだ。君もぼくに興味があるのかい?」
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2012, 10月 22
「はぁ?」「隠さなくていいよ。君もぼくのスター性に気づいたんだね。だから、いじめっこを撃退するというありがちな演出に擬態して、ぼくの関心を引こうとした。ところが唯一の誤算は、ぼくにはそうしたまどろっこしい手続きは全部お見通しだったということさ」「……」
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2012, 10月 22
「まあ、転校生の君には分からないと思うがね。そうだ、これ、君にあげるよ?」「なに?」「ぼくの書いた詩集さ」「……」「本当は1000円なんだけど、500円でいいよ」「え?」「特別出血大サービスさ」「金、払わなきゃいけないの?」「君の関心が500円で買えるなら安いものだろ?」
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2012, 10月 22
と、詩集を開く転校生。「中、半分くらい白紙だけど」「うん。そこは締切に間に合わなかったと正直に告白するよ。だからこそ半額というのもあるけれど」「……」そうして、転校生は人生初の挫折を経験する。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2012, 10月 22
3ヶ月後、昼休みの校庭に、突然、女生徒の悲鳴がこだまする「キャア!」駆けつけてみると、人だかりの中心に、顔を押さえ、体を海老のように縮こまらせたいじめられっ子の姿が。その傍らには、血染めの拳を呆然と見つめる転校生が佇んでいた。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2012, 10月 22
やがて救急車で病院に運ばれるいじめられっ子。一方転校生は、先生に職員室に釣れて行かれた後、誰も見る者はいなかった。そのまま再び、転校していってしまったのだ。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2012, 10月 22
その後、転校生がどうなったかは誰も知らない。一方いじめられっ子は、60歳で隣人に殺されるまで、ずっといじめられ続けたとさ。めでたくないめでたくない。
— 岩崎夏海 (@huckleberry2008) 2012, 10月 22