「そうだね、僕は文学作品が大好きだよ。
ラノベだと特に『ブギーポップ』が好きだけど…
文学の中で特に好きな作品には負けるかな
昔の文学作品のほうがなんとなく読んでいて心地よく感じるんだよね」「…だよね!だったらそんな部より日本文学研究会に!」
「えーやだよー」
「え?なんで?」
「だって、キミよりも竹田くんのほうが面白そうだもの」
「読書は基本的に一人でするものでしょ
だけど部活はみんなでするものだよね
だったら大事なのはどんな本を扱うかよりどんな人がいるかでしょ?
好きな本について語り合うのは楽しいけど、
やっぱり面白い人と話したほうが有意義だよ。」「ぼくのどこがそいつに劣ってるんだ!そんなくだらない本を読んでる奴に!」
「…山下くん。
高尚な文学作品てさ、読んだ人の心を豊かにし、視野を広げ、
人間的に成長させてくれる そんな素晴らしいものだと思わない?」「は?そりゃ、うん。その通り文学は素晴らしい」
「うんうん。ところでさ、山下くん。
自分と異なる価値観の人間がいるということを想像もせず、
読んだことすらないものをくだらないと断じ、
他人の趣味を低俗だと無神経に罵倒する。そんな人をどう思う?
高尚な文学作品をたくさん読んで有意義な読書経験を積んできて
心が豊かで視野が広く人間的に成熟した高尚な人間であるところの山下くん?」
「え・・・」
「あのね、山下くん。
念のためいうけど。僕は文学を貶めたいわけでも文学の愛読者を貶めたいわけでもない
キミという個人をバカにしているんだよ。
文学とライトノベル、どちらが優れていてどちらが劣っているかとかそんなことには興味が無いし
まあぶっちゃけ個人的には個人的には文学のほうが高尚だと思うけど
芸術と娯楽をそういう次元で比べるのも無意味だよね。
低俗上等じゃない。娯楽はパンツ見せて内臓ぶちまけてなんぼだよ。
それに高尚な作品を読んでいる人間が高尚な人間だとは限らないしね。
キミが鏡を見ればその実例がいるわけで。
どれほど優れた小説に触れてこようと自分自身が優れていることには一切ならないことがわからないかな?
読書が好きで美しい言葉や素敵な物語に心を震わせたことがありながら
どうして言葉に対してそこまで無自覚でいられるのか不思議なんだけど?
何十冊も何百冊も本を読んできてなお言葉に現実的な力があることにさえ
気づけ無いのなら、いくらなんでも読書のスキルが低すぎなんじゃない?
優れた作品をたくさん読んでるくせになんでその程度のアタマしか…」「その辺にしとけよ」
「言葉が暴力になることをわかりやすく実演してあげようと思ったんだけど。
それに僕間違ったこと行ってないよね?」「間違ってはいないかもしれんが…そういうのは正しいだけで…やさしくない」
「でも先にひどいことを行ったのはあっちだよ?
ていうかキミがバカにされてたんだけど」「だからってあそこまでこき下ろすことはないだろ
血の気が多いやつなら殴られてもおかしくなかったぞ」「かまわないよそのくらい。殴り返される覚悟もなく殴ったりはしないよ」
「意外と攻撃的なやつだな」
「だって、ムカつくんだもん。嫌なんだ。
自分の好きなものを持ち上げるために他のものを貶めるやつ。
それが自分の好きなものの評判を自分で落とすことになるってわかんないやつ
そういう奴と趣味が同じっていうのが嫌。お仲間だって思われるのも嫌。」「お前の言うこともわからないくはないけどな。
ま、世の中いろんな奴がいるしいろんな奴がいるってことをわからない奴ばっかりでもねぇよ。多分
でも、仲間になると思っていたヤツを知らない人間にいきなりかっさらわれたんじゃムカつきもするだろ。
そこは考慮してやれよ」「……山下くんには、あとで謝る。」
「ん。それがいい。」
「…竹田くん。君はいい人だなぁ。」